2012年5月28日月曜日

味の素とアサヒとキリンと。

これは割と前の話になりますが、

味の素が、傘下に収めていたカルピスを、アサヒグループHDに売却しました。

これによって、アサヒの清涼飲料事業は、

伊藤園を抜いて業界第3位になります。
(1位はコカ・コーラ、2位はサントリーです)

この動きの両者の目論見は、



味の素側は本業のアミノ酸関連事業への

投資集中に向け、関連性の薄いカルピスを売却し、

アミノ酸関連のM&Aや技術買収への資金確保を意図したもので、
(約1200億円の資金を確保することになります)


アサヒ側は、予てより「三強に入らないと戦えない」

と考えていた清涼飲料事業で「カルピス」という

ブランド力と乳酸菌の技術を手に入れ、

国内事業の基盤強化を図りたいという意図があったと思われます。




味の素は食品大手として、国内の競合よりも

スイスのネスレなどの海外競合を意識し、

売上高営業利益率、ROEなどの財務指標の改善を

進めています。その中でカルピスは1106億円の売上高に対し、

45億円しか営業利益をあげられていないこと、

ブランド力だけではこれ以上の売上高拡大に限界があること

等から今回売却に踏み切ったのではないかと思います。




アサヒの競合であるキリンビールも

約2年前にサントリーと提携が破談になったりしましたが、

シンガポールの同業メーカーに出資したり、

海外への進出の足がかりを作ろうと必死です。


カルピスのようにすでにブランド力があり、

国内で一定規模の売上が見込める企業はいくつか

あるものの、国内市場はデフレ基調の継続、

PBによる価格競争、第三のビールの台頭など

市場規模の縮小圧力になりうる要素はたくさんあります。



個人的には、今回の売却は味の素にとっては非常に

意味のあるものになったのではないかと思います。

味の素には強みとなる技術があり、それを武器に海外に展開できます。

しかし、アサヒとキリンには海外に展開する際の武器がないのです。

海外ではバドワイザーのようにもっとグローバルにブランドが確立された

製品がいくつもあります。価格もほとんど変わりません。

だからM&Aをしていくしかないのです。


国内の市場は尻すぼみになり、

比較優位になれるような強みもなく、

財務状態も芳しくない(=M&A資金に限界がある)

という苦しい状態の飲料大手二強は

今後どのように活路を見出していくのか、


一方、資金を手に入れ、元々実質無借金状態で

13年までに約3000億円の営業キャッシュフローを創出でき、

強みとなる技術をもっている味の素は

どこまで海外で戦えるのか、


今回の買収に絡んだ二社は明暗が分かれるような気が

個人的にはします。あくまでも一介の大学生の私見でしかありませんが。



2012年5月23日水曜日

studygiftの疑問

お久しぶりです。

今回はあまり経済・経営にはかかわらないところですが、

かなり話題になったstudygiftのお話を。

知らない人は知らないお話だと思いますが、

まあこのサービスは近頃はやりだしたというか、

はやろうとしているクラウドファウンディングの一つで、

大学とかに行きたいんだけどお金が・・・・

っていう人のために、オンライン上でプレゼンをさせ、

個人に出資してくれる人を探すという

簡単に言うとそういうサービスだそうです。

賛否両論、喧々諤々の議論がツイッターでは行われていました。

無論、支援者でもない人間が賛否を論じれば

このサービスが良くなるわけではないですし、

外野でガヤガヤ騒ぐなよと思う人もいると思います。

ですが、

大学に通うお金が足りない人をネットを通して不特定多数が支援できるか

ということが今回のサービスが成功するかどうかで

占われるのもまた事実。

一般の人の反応も、将来拡大させたいであろうサービスにとっては

まったく無意味ではないと思うので、僕も私見を書きます。



結論から言うと、「非常に難しい」と考えています。

なぜなら、

「直接個人に対するお金を集めるよりも支援を現在も行っている団体などに寄付する形にして、情報格差の無い状態で支援を受ける人を決定したほうがいい」

という意見に現在のサービスは勝てないからです。

ネット上でプレゼンをさせ、支援者を募る手法が間違いだとは言いませんが、

もし家入氏が「困っている不特定多数の学生を助けたい」のなら、

上に記した方法のほうが、より支援の必要性の高い学生から支援をしてあげることが

可能になります。

NPOなど学生支援をメインの活動にしている団体のほうが、

家入氏たちよりも支援がほしい学生に知られているだろうし、

支援のノウハウも持っているはずです。

しかも、

ネット上でプレゼンという形だと、ネット環境がないくらい困っている学生よりも

先にネットで素晴らしいプレゼンができるちょっと困っている学生が

先に支援を受けてしまう可能性を否定できないと思うのです。



発想は素晴らしいのですが、

それを達成する手法が「ベスト」ではないのが、

このサービスがあまり普及していかないだろうと僕が思う理由なのです。




ネット上では、

第1号の支援対象者である坂口という人自体の

さまざまな問題点を指摘している人もいます。

僕もそうだと思います。

奨学金が打ち切られるような大学生活を送っている人間が

就職したいので大学に居続けたいから金欲しいと言い出し、

終いには、実はもう退学してるんですよとか言い出す時点で

あの人は変だろうと思います。

でもそれはあくまであの人の問題で、

サービスの問題ではないと思うんです。



でもまあ、上に書いた団体に寄付する形をとらずに、

「絶対やめない」とか言い出してるようだし、

あの感じだと家入氏と知り合いの人が、

家入氏が呼びかけて集めた金で大学に行くっていう

非常に個人的な動きを、

あたかも「困ってる人を助ける」っていう

公共性のある取り組みに見せているようにも見えるので、

みんなが家入氏すごいすごいって言ってるけど、

僕はやっぱり変だなあと思わざるを得ません。


「ソーシャル」っていう言葉の中で称賛される人たちって

一概にみんなすごいわけではないんだなあって

今回初めてわかりました。笑


何かご意見お持ちでしたら僕のツイッターアカウントまでお願いします(@am01ryo30)

2012年5月14日月曜日

キヤノンの無人化工場

キヤノンのニュースを決算以外で見たのは久々でしたんで、

それについて書こうかなあと思います。


デジタルカメラの生産工場を「完全自動化」するというのが

ニュースの概要なんですけど、詳細には、

2015年をめどに、デジタルカメラの主力工場である大分キヤノンと

交換レンズの拠点である宇都宮工場で

「完全自動化」のラインを稼働させるそうです。

キヤノンは今までの記事なんかの様子では

セル生産方式から、一部ロボットを取り入れた「マシンセル」方式

に転換をするなど、現社長が特に生産面の革新に力を入れてきた印象

が比較的強いという実感があります。

なので今回もその流れの一つだなあと思いながら、記事を読んでいたんですが、

ひとつ気になることがありました。




記事によると、今回の生産無人化で「コスト競争力を高め」、

ものづくりと研究開発の基盤を日本に残す。とありました。

生産無人化で「コスト競争力を高める」ということは、

それによって人件費が抑えられるということだと個人的には解釈しました。

しかし、後の部分で

「生産管理や成長分野の新規事業部門に移すなどして雇用を吸収する方針」

と書かれていたのです。



あくまでも、個人の感想ですが、浮いた分の従業員を解雇しないで他に回してしまうと

コスト削減の効果は解雇するよりも薄れると思うんです。

それでも「日本の企業らしく」、雇用は守る雇用は守る・・・と執念のように

首を切らないでいれるのは、

ああ、まだやっぱり光学が崩されない技術なだけに余裕があるんだなあと

思いました。


やっぱり技術に比較優位がある企業が残るんだなあと。

それは部品や素材のメーカーに多いと思うんですが、

キヤノンなど光学分野の完成品メーカーは、

完成品メーカーの中で唯一と言っていいほど、

まだ負けないで済んでいる企業じゃないでしょうか。



記事には主力工場が日本に残ることで、関連する部品・素材メーカーが

日本に残り、企画から共同で開発できる強みが活きると書いてありましたが、

同時に、

電子機器の受託製造メーカーに委託するケースが、

競合他社の間で増えているとありました。

すぐに「電機の二の舞」になるとは言い切れませんが、

キヤノン単独で残り続け、国内に囲い込んでも、

競合で外に抜けていく企業があれば、

そこから技術流出の懸念はあるのではないでしょうか?


あるいは今回の生産革新も踏まえ、キヤノンが

ニコンなどライバルに対し、優位性を保ちながら

世界の市場のシェアを奪い続けた場合、

ライバル企業が解雇に踏み切ったら、クビになった人々が

中台韓のメーカーに再就職する可能性はないでしょうか?



そうやって蓄積された流出技術をサムスンとかそこらへんが

しっかり利用して参入してきたとき、

国内に留まり、ある程度の業績を維持することに慣れ切った企業が

国際的な市場で勝てるのかどうか?



そこだけが、目下考えうる光学機器メーカーの懸念なのではないでしょうか。

2012年5月5日土曜日

ノマドの俗論。

ちょうど数日前くらいにTOKYO MXに安藤美冬氏が出演をしていた。

同氏は今流行りの「ノマドワーカー」で、今回もそのことで呼ばれ、

出演をしていたそうな。



久々にイライラとさせられる番組でありましたので常体で書く事にする。

何にイライラしたかというと、

「ノマド」という流行りものはあくまでも「働き方」であって、

「職業」ではないはずだし、「肩書き」でもないはずである。

たまたま自分の仕事が「ノマド」的に働くほうがいいアウトプットが出せる、

もしくは「ノマド」でも以前と変わらぬアウトプットが出せて、その働き方

のほうが精神衛生上いいとかそういう時に初めて、

そういった働き方になるはずである。


しかし、

もう番組全体の雰囲気として「ノマド礼賛」状態だった。
(まあ途中で見るのやめたので、以降は存じ上げない)

番組が悪いわけではないのはわかっている。

注目されてるし、視聴者の反応もいい感じだった。
(ツイッターのコメント見る限り。)



時代がSNSとかそういった流れにあることは百も承知している。

しかし、「ノマド」という働き方はある程度の条件が揃ってないと

不可能な働き方のはずである。



安藤美冬という人はフリーでノマドで成功した「一例」でしかない。

同氏が提唱する「ウィークタイ」なるものも、

これからの社会で今までの「ストロングタイ」にとって代われるくらいのもの

であるかいささか不透明である。


なにより、同氏は何かの専門家ではない。

ノマドワーカーのパフォーマンスの向上・低下について

科学的なデータがあるわけではないのである。




なのにTwitterなんかではもう賛同の嵐。
(まあある意味ホームみたいなものだから当然か)

本当に周りの人はあれが「一例」でしかないことを認識できているのだろうか。

出来ている人は当然いるだろうけども、

なんか「次の時代はノマドだー」なんて

思っている若い人なんかがいたらと想像すると恐い。



SNSやWi-Fiを使いこなすことも、

働く場所を選ばずに働くことも、

それがいいか否かは個人によって差が出てくるはずなのに、

それが「潮流」であるかのように全肯定する人たちを見てると

なんか恐いなあと思って書いてみました。



2012年5月2日水曜日

courierを読んで。

今回のcourierの最新号は、「あの企業で働いたら」という特集で、

・FaceBook
・サムスン電子
・アレバ
・マッキンゼー
・ゴールドマンサックス

の外資5社について書いてて非常に面白かったのでそれについて。

アレバは特殊な企業(原子力関連なので)なので特徴が異なるとして、

その他4社の感想を日本の企業の印象と比較して書きたいと思います。

まず、一番思ったのは、どこも「激務」であるということ。

FBでは競合の新サービスに対抗する新機能をエンジニアが徹夜で開発していると

書かれていたし、マッキンゼー・ゴールドマンサックスはコンサルが定額報酬であるが故に

顧客は自分たちを使い倒してくる(どんだけ依頼しても報酬が一定なので)こと

が書かれていました。

サムスン電子では

「仕事ができる人は伸ばし、できない人は抑え付ける」という

徹底した信賞必罰の状態になっているそうです。


その他にも、FBの「現状維持が唯一の敵」である話など非常に興味深いので、

興味のある人は読んでいただければいいと思うのですが、


こういう話を目の当たりにすると、日本企業の「社畜」と揶揄される人々は

果たして本当に不条理な労働環境なのかと、考えさせられます。

確かに、出勤が早かったり、帰るのが遅かったり、休日も出社したり、

それが「正しい姿」であるとは言いませんが、

世界中にある競合他社が死に物狂いで働いていたら、

それに負けないアウトプットが求められるのはやむを得ないと思うのです。

そしてそれが正規の時間内に出せない場合、
(その理由が外的要因であったとしても)

ある程度働かざるを得ないのは事実なんじゃないかなと思うんです。

世間でノマドがブームになって、メディアにも取り上げられる中、

働いてもいない大学生がこんなことを言うとふざけるなと思われるかもしれませんが、

ある程度はこの考え方は間違っていないと思うんです。

あくまでも、必要なアウトプットを出すことが目的ではありますが、

今、日本の企業に余裕のあるような企業がない現状を見るに、
(もしあればどなたかに教えていただきたいくらいですが)

こうやって周りが仕事しまくっているのに、

働きすぎだと言っていると、本当に簡単に企業の力は弱まってしまうのではないでしょうか。




僕自身は、まだ働いていないですし、

働き始めた先輩の話では、

最初の仕事は必ずしも楽しいものではないでしょうけど、

全部、自分の将来と会社の将来に繋がっていると考えて、

若いうちはきっちり求められる分だけ働くような

そういうある面で「社畜」と呼ばれても仕方がないような

そういう社会人に自分もなるだろうと思うのです。


今回のcourierはかなり面白いので、

暇な方は是非ご一読をおすすめします。

2012年4月24日火曜日

働くことについて。

最近は就活の一番重要な時期なので、

僕の先輩たちはいろいろと大変な時期でしょうが、

お話を伺う限り、やはりいろいろと考えさせられるようです。



なので、自分なりに「働くこと」について考えてみました。

僕がとても参考にしたのはライフネット生命保険の出口社長の考え方

なのですが、まあ気になった方は後でダイヤモンドオンラインに行けば見れるので

見てみるといいと思うんですが、


日本では「ワークライフバランス」なる高尚な考え方が広まり、

いろいろと変化はあるようですが、

世界で見れば、日本は基本的に「とても働いている」国ではありません。

韓国とかはもっと働いていますし、

FaceBookも他社の競合サービスに勝つために集中的に働く期間があるそうです。
(なんかランプが灯るとみんなこもって働くみたいなのを読んだことがあります。)

なので、元々日本人は働きすぎだみたいな先入観はもう誤りと考えるべき

と僕は思っています。

ただ、まあ個人によりその実感は違うでしょうし、

やってる仕事が楽しいかどうかなんかも

時間の経過の実感に影響してくるとは思います。


ぼくはおそらく日本の企業に就職すると思いますが、

最初にやる仕事は多分そのあとやる仕事と比較すると

あまり楽しいとは言えないことが予想されます。

当然、大きなプロジェクトに関わるのはある程度の

評価がないとできませんから、必定最初の仕事は

地味だったり、つまらないんだと思います。


でも全部が後々活きてくる仕事だと思いますし、

上にいる人も通った道なので、耐え忍ぶしかないでしょう。笑



そして今、学生でいるうちに

いろいろと準備をしないといけないわけで、

今年の夏はベトナム、来夏はフィリピンに行きます。

TOEICも形上必要だと思われるので受けましたし、

体力の水準を保つためにランニングと筋トレも続けてます。


もう3年なので、必要なことを自分でしっかり見定めて

生活していこうかなあと思ってます。

最近みた言葉ですが、

「他人に期待する人生は過ごさない」

というのがすごい気に入ってて、

どんな企業に入ってどんな人生を送っても充実できるように

自分で自分をしっかりと作り込んで行こうかなっていうことで、


最終的に決意表明みたいになっちゃいましたが、

今後も自分の研鑽のためにこのブログしっかり書いていこうと思ってますので、

よろしくお願いします。

企業内分業

どうも。

久しぶりに記事を書きますが、先日ゼミナールでシャープのことを

プレゼンしたんですが、それに関連した自分の考えを書いてみます。



シャープは今回、鴻海グループと手を組んで復活を目指す決断をしました。

日本企業にしては非常にいい決断だろうなあというのが、

個人的な印象ですが、

なぜかというと国際的な分業がシャープの中でおこなわれるだろう

と思うからです。

堺工場は半分鴻海の製造ラインになりますが、

これ以降、シャープは自社製品の組立を

鴻海に任せることも可能になるだろうと思われるわけです。

今後市場として予想されるのは、

日本やアメリカよりも個人の所得が少ない新興国市場ですし、

テレビなんかは単価の下落が進んでる状況なので、

なるべくコスト競争力を高めておく必要があると思うんです。

なので、シャープは今まで持っていた自社工場の売却と

人員の整理を労組に臆することなく断行し、

生産・組立を鴻海に託して、今まで以上に競争力のある

製品開発に資源を集中させていくことが、今後求められていくのではないでしょうか。



そして人員整理の際にも、外資である鴻海が筆頭株主として存在している

ことはプラスに働くのではないかと思うんです。

家電業界は今までの日本的な経営ではもう勝てないことは

多くの方々が薄々気付いていることだと思うんです。

スピードのある経営判断ができないと、

一挙に設備投資をして席巻してくる韓国や中国の企業には勝てない

からです。


日本の企業が持っている「見えない資源」を

最大限活用しつつ、競争に耐えられない分野はどんどん

関係企業に任せ、自社の中での「分業」を進めていくのが、

日本企業の特にメーカーには必要なんじゃないかなあと

思います。あくまで私見ですし、外から見た考えですが。